村上春樹が言う、日本の「戦争加害者としての発想」
私は文藝は門外漢だし、好きか嫌いかを論じる以前に、村上春樹の作品を読んだことが無い。興味がないからしょうがないのだが、たまに報道やコラムで開設される村上の世界観を知るにつけ、読む気は殆ど失せてしまう。作家・文学者にも思想信条はあるだろうし、その思想信条が右であれ左であれ、読者を獲得すればそれは、彼等の生業としては勝利である。だが、大江健三郎のように、ノーベル文学賞を受賞していても「どうしようもない左翼」もいるわけで、彼等、世間でいう一流の文学者が国論や日本人論を語る時、それらが常に正しいわけでなく、単なる一つの見方にすぎないのである。
村上春樹が、毎日新聞のインタビューに答え、彼の戦後歴史観を語っている。
村上春樹さん:単独インタビュー 「孤絶」超え、理想主義へ (毎日新聞)
◇日本の問題は責任回避
●終戦も原発事故も
−−来年は戦後70年。作中で近代日本の戦争を描くこともあった作家は何を思うか。
直接的な意見を述べるとステートメント(声明)になってしまいます。小説家はステートメントを出すのではなくて、フィクションという形に思いを昇華させ、立ち上げていくものだと思います。ただ、僕は日本の抱える問題に、共通して「自己責任の回避」があると感じます。45年の終戦に関しても2011年の福島第1原発事故に関しても、誰も本当には責任を取っていない。そういう気がするんです。
例えば、終戦後は結局、誰も悪くないということになってしまった。悪かったのは軍閥で、天皇もいいように利用され、国民もみんなだまされて、ひどい目に遭ったと。犠牲者に、被害者になってしまっています。それでは中国の人も、韓国・朝鮮の人も怒りますよね。日本人には自分たちが加害者でもあったという発想が基本的に希薄だし、その傾向はますます強くなっているように思います。
原発の問題にしても、誰が加害者であるかということが真剣には追及されていない。もちろん加害者と被害者が入り乱れているということはあるんだけど、このままでいけば「地震と津波が最大の加害者で、あとはみんな被害者だった」みたいなことで収まってしまいかねない。戦争の時と同じように。それが一番心配なことです。(以上、抜粋)
このインタビューのキモは、太字にした部分、「日本人には自分たちが加害者でもあったという発想が基本的に希薄だし、その傾向はますます強くなっているように思います」だろう。その結論を導き出すために、村上は、凡例として原発事故と戦争責任を持ち出し、地震が悪い、津波が悪い、戦前の軍閥が悪いという言い訳を基に、誰も責任を取らない日本の「無責任社会構造」をつくり上げている。
原発事故の件はここでは置くが、「終戦後は誰も悪くないということになってしまった」という彼の着眼は、戦後民主主義信望者の歴史の見方である。これはある意味において正しい。だが、村上春樹の結論は、日本人の戦後の歩み方を的確に捉えているとは思えないのだ。彼は戦後の日本人にも贖罪意識と反省を促し、戦前も悪なら戦後も悪を忘れてはならないという姿勢を示唆する。即ち、村上は、戦前は絶対悪であるという戦後民主主義の基本的思想の枠組みから一歩たりとも出ていない。それを決定づけるのが、「自分たち(日本人)が加害者であった」という断定だ。
では戦後日本人は、村上の言うように、贖罪意識も持たず、反省もしてこなかったのか?全くの逆である。日本人ほど謝罪し、日本人ほど日本人自身を否定し、聯合国が自分たちの利益のためにつくった窮屈な戦後秩序の中でつつましく生きてきた国民はいない。支那や朝鮮に対する謝罪と賠償の歴史を見れば明らかである。ドイツはナチスに全責任を負わせ、ドイツの戦後を形成してきた。ドイツのような国家形成の道を、日本は取らなかった。自国の歴史も知らず、日本人の生き方を否定することは止めてもらいたい。
日本が戦争加害者でもあったという発想の希薄化傾向がますます強くなっているという指摘を裏返せば、「日本人よ、贖罪意識を持て。戦争加害者として永遠に生きよ。支那や朝鮮に謝罪し続けろ」という主張と取れなくもない。これこそ、日本の戦後サヨクをリードしてきた、大江健三郎他の「進歩的文化人」の主張に沿うものだ。村上が大江健三郎化してきたのか、或いはもともと大江的なのかは知らない。
「直接的な意見を述べるとステートメント(声明)になってしまう」というのは、沖縄ノートを書いた大江のような文化人に対する皮肉とも取れる。ただ、言っていることは大江と大差ない。村上が戦後日本人の代表として加害者意識を訴えるのなら、数多いるハルキスト達から募金でも集め、支那や朝鮮に寄付することだ。その他の日本人を巻き込むのは御免である。
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