今月19日、東京・永田町の衆院議員会館。戦時中に空襲で被害を受けた人たちの集会で、埼玉県坂戸市の高橋明子さん(82)ら高齢の男女5人が、国による補償について「私たちにはわずかな時間しかない。一日も早い立法を」と、与野党の国会議員に訴えた。
一夜で約10万人が犠牲になった東京大空襲で両親と弟、祖父母を亡くした高橋さんは、安倍晋三首相のハワイ・真珠湾訪問に複雑な思いも抱く。「真珠湾攻撃がなければ、あの空襲もなかった。家族も死なないですんだ。首相は慰霊するだけでなく、攻撃は過ちだったと認めてほしい」
国は戦後、元軍人・軍属と遺族に恩給や年金を支給してきたが、空襲で家族を亡くしたり負傷したりした民間人向けには、こうした制度がない。各地の被害者は国を相手に裁判を起こしたが、いずれも敗訴。現在は超党派の議員連盟が議員立法による救済をめざしている。
首相は日米開戦の地、真珠湾をオバマ大統領と訪れることで両国の和解や強固な同盟関係をアピールし、「戦後」との決別を印象づけたい考えだ。しかし、高橋さんは言う。「私たちは生きている限り、戦争を忘れられないのです」(抜粋)
■「アジアへの目配りが先」
昨年の首相の戦後70年談話や慰安婦問題をめぐる日韓合意では、先の大戦への反省を見せつつ、アジアへの加害責任などの問題は自分の代で終わらせたいという思いがにじむ。その延長上にある今回の訪問に対し、アジアの戦争被害に向き合ってきた人たちは厳しい目を向ける。
戦時中の朝鮮人強制連行の調査に長年携わってきた立教大学名誉教授の山田昭次さん(86)は「日米同盟を強化する思惑があるのだろうが、アジアでの植民地支配や戦争責任と向き合わない限り、周辺国との摩擦は続く」と指摘する。
山田さんは朝鮮人の犠牲者数や労働実態など、未解明な部分を調査するよう訴える。「関係者の高齢化が進む今、国はすぐにでも調査に取り組まないと、過去の問題を解決するための土台すら失われてしまう」
福岡市の市民団体で、日中戦争時の南京事件などの歴史問題に取り組む西尾達(とおる)さん(62)は「真珠湾に行くことはある程度理解できる」としつつ、「戦争の犠牲者を思うなら、より大きな被害を与えたアジアへの目配りが先だ」と主張する。
西尾さんらは毎年12月、南京事件の生存者を中国から招き、話を聞く集会を開いてきた。高齢化で今年から招待できなくなったが、今後も集会は続けるという。
「真珠湾攻撃に至る前にアジアでの日本の膨張政策があった。肝心なところに目を向けないままでは、あの戦争を清算することはできない」
(伊東和貴、岩崎生之助、其山史晃)
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